【教育ニュース】
定額働かせ放題の闇にどう対応していくか
〜問われる教員の働き方〜
その2「給特法と教員の働き方」
こんにちは。Yome美です。
今日は、教員の働き方について持論を述べてみようと思います。
第2弾です。
2024年2月14日公立学校教員の給与増に向けた議論が中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別部会でスタートしたことを受けて、全国の公立教員が固唾を呑んで見守っているところです。
世間では、教員の仕事の話題になると、その特性上「教員はブラックだ。」や、残業代が出ないのに日々忙しいことを揶揄した「定額働かせ放題」などという意見がよく挙げられます。
教員の働き方改善に向けた秘策は、存在しないのでしょうか?
公立学校教員の働き方について踏み込んでいく前に、給与について定めた法律である給特法について理解を深めていきましょう。
給特法とは・・・
1972年施行の教員給与特措法のこと。公立学校教員に関する給与制度。「残業代」は支給せず、代わりに基本給の4%分を「教職調整額」として一律に上乗せ支給するルールが定められている。施行されてから半世紀以上続いている制度である。
残業代が生じないことから、「管理職側に長時間労働を抑制しようという意欲が働きにくい」「『定額働かせ放題』の制度だ」などと批判されてきました。
教員のブラックたる所以については、さまざまな意見がありますが、給特法との関わりがあげられることが多い気がします。
本当に制度に原因があるのでしょうか?
制度のメカニズムと問題点、現在に至るまでの「給特法及び教職調整額の在り方」に関する変遷について独自にまとめてみました。
給特法によって公立学校教員は、「教職調整額を一律支給する代わりに、原則として超過勤務手当(休日・残業代)が支給されない。」 という縛りが生じます。
したがって、教員に仕事をさせたい国や自治体の立場からいくら仕事を押し付けても給与負担が増えないのです。
給特法及び教職調整額の在り方に関する変遷
中教審を始めとしたは給特法及び教職調整額の在り方に関する変遷は、以下の通りです。
2006年7月 中教審「教職員給与の在り方に関するワーキングループ」
2007年3月 「今後の教員給与の在り方について(答申)」
2008年11月 「学校・教職員の在り方及び教職調整額の見直し等に関する作業部会」
2009年5月以降
2017年7月 中教審初中分科会「学校における働き方改革特別部会」
2019年1月 先送りの方向性を示す
2019年 給特法改正
2023年4月 論点・留意点を列挙するにとどまる
どれも、大きな変革まで至らず先送りになっている節があります。
制度としての課題は、以下の2つになるでしょう。
①長期間労動を抑制するメカニズムがないことについて
②使用者側が正規教員に仕事を追加することを抑制するメカニズムがないこと。
給特法は教員の職務の特殊性から一般労働者と同様の労働時間の管理には、なじまないこと等を理由に、公立学校教員で割増賃金(残業代)を支払わない仕組みになっていることは不当ではないと判断し、認めませんでした。
校長の職務命令に基づく業務を行なった時間が日常的に長時間にわたって、時間外勤務をしなければ事務処理ができない状況が常態化している等、給特法の趣旨を没却するような事情が認められる場合は、校長に業務量や勤務時間等の調整措置を執るべき義務があるとして、②の請求が認められる余地があると判断しました。
→しかし、本件訴訟では、給特法の趣旨を没却するような事情が認められないことから原告の請求を認めませんでした。
今まで学校や教員が担っていた仕事を分類してみるとその特性が見えてきました。次の「学校・教師が担う業務に関わる3分類」は、2019年の中央教育審議会答申で示されたものです。業務の中で学校や教員以外が担うことができるまたは、負担軽減できる内容で分けています。
①基本的には学校以外が担うべき業務
②学校の業務だが、必ずしも教員が担う必要のない業務
③教諭の業務だが、負担軽減が可能な業務
①と②は外部委託を行うことが多くなっている。外部委託の給与は低額・
この裁判で、全国の教員が驚愕しました。その理由は、第一審が教員の業務と労働時間についてどう捉えるか詳細を示したことにあります。(どのような業務が労働時間に含まれるか詳細に認定しました。)
ポイント1 在校時間全てが労働時間ではない。
→校長の指揮命令に基づいて従事した部分を労働時間として認定。
○労働時間認定された業務○
朝自習の準備・業者テストの採点義務・通知表作成・校外学習の準備など
※しかし、授業準備は最低限必要限度の1コマにつき5分間しか労働時間として認定しない。
教材研究・提出物確認・保護者対応など
→理由:各教員の自主的な判断で行われる物であるから
埼玉県小学校教員残業代請求訴訟からわかること。
授業準備は最低限必要限度の1コマにつき5分間しか労働時間として認定しない。
という点について、教員の業務実態とかけ離れているという声が現場の声として聞こえる。
5分はあまりにも少なすぎる!!
しかし、授業準備については、その性質上以下の側面も持ち合わせている。
→いくらでもやることができるので、時間にキリがない。②経験が浅い教員と経験豊富なベテランでは、時間も質も変化する可能性がある。
→経験浅い教員:時間がかかりやすく、質が低くなりやすい。
→ベテラン教員:時短しやすく、質が高い可能性有り。
→もちろん教員によるので、上記とは逆のことも普通に起こりうる。③もし、校長が厳格に時間や内容を管理したり、過度に成果を要求したりすると教員の専門性を奪い兼ねる。
以上から、授業準備にかかる時間が、労働時間か否かという二項対立的な法律論で議論するのに適さない点も事実である。(※ぜひ先生方にはご意見いただきたいです。コメント欄に持論を記述していただけると幸いです。)
今回の裁判の結果によって、我々が本当に危惧すべきことは「教職希望の人材が減少したのではないか。」ということ。
それは、教職が、法的に業務として認められない仕事を残業代無しで行わなければならない仕事だと思われかねないから。(実際そうなのだが・・)
将来に不安のある現代の大学生は、教職より好条件の職業を選ぶのが妥当だろう。ただでさえ不足している教員の数が今以上に減ってしまうのも不安要素である。
これらを踏まえると、定額働かせ放題の闇は、想像以上に黒く、教育業界の将来すら暗闇の中に漂っているように感じられてしまう。
今回の記事では、埼玉県小学校教員残業代請求訴訟をもとに、教員の働き方について考えてみました。
ちなみに、残業代請求訴訟の第一審で裁判所が、次のように付け加えていました。(田中)「(本件訴訟で顕れた原告の勤務実態、証拠として提出された調査の結果や文献等をみると、現在の我が国における教育現場の実情として)給特法は、多くの教員が校長の職務命令で一定の時間外勤務に従事せざるを得ない状況にあり、もはや現在の教育現場の実情に適合していないのではないかとの思いを抱かざるを得ず、原告が本件訴訟を通じて、この問題を社会に提議したことは意義があるものと考える」(中省略及び簡略化)としている。
また、「我が国の将来を担う児童生徒の教育を今一層充実したものとするためにも、現場の教員の意見に真摯に耳を傾け、働き方改革による教育職員の業務の削減を行い、勤務実態に即した適正給与の支給のために、勤務時間の管理システムの整備や給特法を含めた給与体系の見直しなどを早急に進め、教育現場の勤務環境の改善が図られることを切に望むものである。」としている。(第3当裁判の判断 4まとめp46参照)
この裁判所が出したまとめをみて、変革を先延ばしにされたと感じる人もいれば、希望を見出せたと感じる人もいるかと思います。
とても難しい問題ですが、一緒に向き合っていくことで。将来を担う子どもたちのを支える一歩になるのではないでしょうか。
次回は、その2「給特法と教員の働き方」についてまとめたいと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。
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