【教育ニュース】
定額働かせ放題の闇にどう対応していくか
〜問われる教員の働き方〜
その1「埼玉県残業代請求訴訟」
こんにちは。Yome美です。
今日は、教員の働き方について持論を述べてみようと思います。
世間では、教員の仕事の話題になると、その特性上「教員はブラックだ。」や、残業代が出ないのに日々忙しいことを揶揄した「定額働かせ放題」などという意見がよく挙げられます。
教員の長時間労働問題に解決の糸口は、ないのでしょうか?
公立学校教員の長時間労働に関して考える時、2018年9月埼玉県の小学校教員が提起した残業代請求訴訟について触れておく必要があります。
埼玉県小学校教員残業代請求訴訟とは・・・
長時間労働を強いられたのに残業代が支払われないのは違法だとして、埼玉県内の公立小学校の教諭が、県に時間外勤務の賃金などの支払いを求めた裁判で、最高裁判所は上告を退け教諭の敗訴が確定しました。(2023年3月)
この訴訟は、原告がネット上で自分の主張や裁判の経過を積極的に紹介しており、その判決及び内容は、ニュースでも大きく取り上げられ長時間労働に苦しんでいた教員だけでなく、社会全体が注目をするほどの影響を与えました。
裁判の結果は以下のとおり、第一審と控訴審どちらも原告の請求は認められず、最高裁でも上告が受理されなかったことから原告敗訴で確定しました。
2018年9月 埼玉県教育委員会を相手に起訴
2018年12月~ さいたま地裁で審理開始
2021年10月 一審敗訴判決、上告
2022年3月~ 東京高裁で審理開始
2022年8月 二審敗訴判決、上告
2023年3月 最高裁により棄却、敗訴確定
裁判では、それぞれの原告要求にどう答えていたのか見ていきましょう。
①労働基準法第27条の 割増賃金請求権 に基づく残業代請求 について
給特法は教員の職務の特殊性から一般労働者と同様の労働時間の管理には、なじまないこと等を理由に、公立学校教員で割増賃金(残業代)を支払わない仕組みになっていることは不当ではないと判断し、認めませんでした。
②校長が違法な残業をさせていたことに対する 国家賠償法 に基づく国家賠償請求 について
校長の職務命令に基づく業務を行なった時間が日常的に長時間にわたって、時間外勤務をしなければ事務処理ができない状況が常態化している等、給特法の趣旨を没却するような事情が認められる場合は、校長に業務量や勤務時間等の調整措置を執るべき義務があるとして、②の請求が認められる余地があると判断しました。
→しかし、本件訴訟では、給特法の趣旨を没却するような事情が認められないことから原告の請求を認めませんでした。
この裁判で、全国の教員が驚愕しました。その理由は、第一審が教員の業務と労働時間についてどう捉えるか詳細を示したことにあります。(どのような業務が労働時間に含まれるか詳細に認定しました。)
ポイント1 在校時間全てが労働時間ではない。
→校長の指揮命令に基づいて従事した部分を労働時間として認定。
○労働時間認定された業務○
朝自習の準備・業者テストの採点義務・通知表作成・校外学習の準備など
※しかし、授業準備は最低限必要限度の1コマにつき5分間しか労働時間として認定しない。
教材研究・提出物確認・保護者対応など
→理由:各教員の自主的な判断で行われる物であるから
埼玉県小学校教員残業代請求訴訟からわかること。
授業準備は最低限必要限度の1コマにつき5分間しか労働時間として認定しない。
という点について、教員の業務実態とかけ離れているという声が現場の声として聞こえる。
5分はあまりにも少なすぎる!!
しかし、授業準備については、その性質上以下の側面も持ち合わせている。
→いくらでもやることができるので、時間にキリがない。②経験が浅い教員と経験豊富なベテランでは、時間も質も変化する可能性がある。
→経験浅い教員:時間がかかりやすく、質が低くなりやすい。
→ベテラン教員:時短しやすく、質が高い可能性有り。
→もちろん教員によるので、上記とは逆のことも普通に起こりうる。
③もし、校長が厳格に時間や内容を管理したり、過度に成果を要求したりすると教員の専門性を奪い兼ねる。
以上から、授業準備にかかる時間が、労働時間か否かという二項対立的な法律論で議論するのに適さない点も事実である。(※ぜひ先生方にはご意見いただきたいです。コメント欄に持論を記述していただけると幸いです。)
今回の裁判の結果によって、我々が本当に危惧すべきことは「教職希望の人材が減少したのではないか。」ということ。
それは、教職が、法的に業務として認められない仕事を残業代無しで行わなければならない仕事だと思われかねないから。(実際そうなのだが・・)
将来に不安のある現代の大学生は、教職より好条件の職業を選ぶのが妥当だろう。ただでさえ不足している教員の数が今以上に減ってしまうのも不安要素である。
これらを踏まえると、定額働かせ放題の闇は、想像以上に黒く、教育業界の将来すら暗闇の中に漂っているように感じられてしまう。
今回の記事では、埼玉県小学校教員残業代請求訴訟をもとに、教員の働き方について考えてみました。
ちなみに、残業代請求訴訟の第一審で裁判所が、次のように付け加えていました。(田中)「(本件訴訟で顕れた原告の勤務実態、証拠として提出された調査の結果や文献等をみると、現在の我が国における教育現場の実情として)給特法は、多くの教員が校長の職務命令で一定の時間外勤務に従事せざるを得ない状況にあり、もはや現在の教育現場の実情に適合していないのではないかとの思いを抱かざるを得ず、原告が本件訴訟を通じて、この問題を社会に提議したことは意義があるものと考える」(中省略及び簡略化)としている。
また、「我が国の将来を担う児童生徒の教育を今一層充実したものとするためにも、現場の教員の意見に真摯に耳を傾け、働き方改革による教育職員の業務の削減を行い、勤務実態に即した適正給与の支給のために、勤務時間の管理システムの整備や給特法を含めた給与体系の見直しなどを早急に進め、教育現場の勤務環境の改善が図られることを切に望むものである。」としている。(第3当裁判の判断 4まとめp46参照)
この裁判所が出したまとめをみて、変革を先延ばしにされたと感じる人もいれば、希望を見出せたと感じる人もいるかと思います。
とても難しい問題ですが、一緒に向き合っていくことで。将来を担う子どもたちを支える一歩になるのではないでしょうか。
次回は、その2「給特法と教員の働き方」についてまとめたいと思います。ここまでお読みいただきありがとうございました。
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