ICTを使わなくても、学びは深まるのか。
端末を使わず、対話と発問で学びを深めた説明文単元の実践記録。
この実践で向き合った問い
校内で教育DXが進む中、
「クラウドを使わなければ個別最適・協働は成立しないのではないか」
という声を聞くことが増えました。
本当にそうだろうか。
端末を使わない授業は、DXの流れに逆行しているのだろうか。
この問いから、本単元の実践は始まりました。
1年生国語「働く自動車」で、あえてデジタルに依存しない授業設計を行い、授業づくり次第で個別最適と協働は成立するのかを検証しました。
実践の前提条件(リアルな状況)
- 学年:1年生(2学期当初)
- 教科・単元:国語「はたらくじどう車」(説明文)
- ICT環境:タブレット操作経験あり(ただし操作習熟は限定的)
- 1人1台端末環境あり(今回は未使用)
- 校内で教育DX推進中
本実践は、端末活用の是非を問うものではありません。
**「使うかどうかを授業設計として選択する」**ことを意図した実践です。
実践の全体像
探究のプロセスで進めた授業設計
本単元は、探究の流れに沿って構成した。
課題設定 → モデル分析 → 情報収集 → 表現 → 揺さぶり → 一般化 → 振り返り
この単元で目指した学び
本単元では、探究のプロセスの
中でも特に重視したのは以下の2点です。
- 整理・分析
- まとめ・再構築で共通のめあてをもつこと
低学年段階で育てたいのは、
- 情報を選ぶ力
- 言葉の使い分けに気付く力
- 他者の考えを取り入れて表現を高める力
これらは、対面でのやり取りや紙媒体の学習だからこそ丁寧に育てられると考えました。
授業の流れと、実際の様子
① 課題設定|問いをもつ
単元導入では、まず教科書全文を一枚のプリントで提示し、全体像を把握させました。
その上で児童と確認したのは、
- 誰に伝える文章なのか(相手意識)
- 何のために書くのか(目的意識)
を明確にしました。さらに、ルーブリックを用いて個々の課題設定を行いました。
「説明文の書き方を使って、自分の自動車図鑑をつくる」という単元のゴールを共有し、学習をスタートさせました。
② モデル分析|説明文の型を知る
一斉授業で説明文の骨組みを整理しました。
- 全文読解
- 段落構成の整理(ワークシート)
ここでは「説明文の型」を明確にすることを重視しました。
(最初に一斉の時間を取ったのもその意味が強いです。)
③ 情報収集|図書資料で調べる
児童は紹介したい自動車を決定し、図書資料から情報を収集しました。
今回は資料を図書のみに限定しました。
- 教科書を使うと写し書きになる懸念があったため
- 情報抜粋の経験が不足していたため
- インターネット検索指導をまだ行っていなかったため
- 漢字量の多い情報で混乱する可能性があったため
- 児童向け図書を十分準備できたため
「情報を探し出す経験」そのものを重視した判断です。
④ 作成タイム①|学び方を選択する
図鑑作成タイムでは、
誰と学ぶかを児童が選択できるようにしました。
選択肢
- 一人で
- ペアと
- グループで
- 教師と一緒に
実際に見られた姿
一人:資料から情報を粘り強く探す姿
ペア:文章の添削や言い換えの助言
グループ:助言の妥当性を議論する姿
同種の自動車を選んだ児童同士が自然に集まり、協働が自発的に生まれました。
教師は机間指導を行い、
直接答えを教えるのではなく、
「同じ種類の車を選んだ友達を紹介する」など
学びをつなぐヒントを与える支援を行いました。
⑤ 揺さぶり①|言葉の選び方に迫る
作成途中で教師が発問しました。
教科書の文末表現に着目させます。
- ついています
- のせています
- もっています
- つんでいます
「すべて“あります”ではだめでしょうか?」
この問いから、著者が表現を使い分けている理由を考え、
言葉選びの必然性を考えさせました。
→ 作成タイム②へ(2回目の作成タイム)
⑥ 揺さぶり②|文章構造に迫る
さらに全体へ問いを投げかけました。
- なぜこの順番で紹介しているのでしょうか
- 自分の車はどこに入るでしょうか
説明文の論理構造へ視点を広げました。
→ 作成タイム③へ (3回目の話し合いを設定し、考えを深めた。)
⑦ 一般化|説明文の本質に気付く
全体交流を通して児童は
- 言葉は目的に応じて選ばれていること
- 説明文には論理的な順序で構成されていること
に気付き、共有しました。
⑧ 振り返り|学びを自覚する
単元全体を振り返り、学びを言語化しました。
作成タイムを断続的に入れた意図及び児童の変容
本単元では作成タイムを複数回設定しました。
理由は3点です。
- 活動にメリハリをつけるため
- 協働の価値を体感させるため
- 話し合いの視点を段階的に広げるため
個別最適と協働を往還させる設計を意図しました。
結果、児童は、一人で考えることと他者と関わることを使い分けながら、
自分の表現をより良くしようとする姿へと変わっていきました。
この実践から見えてきたこと
教育DXは「手段の高度化」ではなく
学びの質の最適化です。
- 課題設定
- 学習形態の選択
- 発問による思考の深化
これらが機能すれば、端末活用の有無に関わらず
個別最適と協働は成立します。
また、説明文の学習を
「読む」で終わらせず
「書く」「伝える」へ接続することで、
1年生でも
探究的な学びは十分可能であると実感した。
成果と課題
成果として挙げられるのは以下の3点。
① 説明文理解が深まった
「型を使う意味」を体感的に理解した。
② 協働が自然に生まれた
指示ではなく必要性から協働が生まれた。
③ 情報活用能力の基礎が育った
図書資料からの情報抽出経験を全員が獲得した。
今回は、活動ごとに区切りを設け、
教師が流れを整理しながら進めました。
学習の進度を委ねることも検討しましたが、
1年生の発達段階では、見通しをもてず迷う姿が多く見られたためです。
今後は、
トレーニングを積み重ねながら、
少しずつ学習の流れを児童に委ねる時間を増やしていきたいと考えています。
次につながる視点
この実践は、
- 他の説明文単元
- ICTを活用した振り返り
- 学び方の選択を広げる環境づくり
へとつながっていきます。
(※関連記事はこの下にまとめています)
最後に
今回の実践を読んで、
「これは、どうなのか?」や
「ここは、どういう意図?」、
「もっとこうしたら・・」などのご意見がありましたら
ご自由にコメントにいただければと思います。
あなたの意見で、私の授業が変わります。
そして、子どもの学びが変わります。
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